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逝かないで

4年前、退院間もない私はまだ上手く操れない車いすを夫に押してもらい、隣の市まで入院中の友を見舞った。 
私の入院を聞きつけ飛んで来てくれた彼女が、今度は私の退院と入れ違いに入院した。 私達は発病のため勤めていた会社を退社する事になった同僚同士だった。 
歳も近くてお互い “ ケセラセラ〜 なるようになる〜♪ ” と、重たい仕事も軽く受取り、お互いフォローしあい楽しく仕事していた。 
いつも二人笑っていた様な気がする。 そんな二人が揃って障害者になってしまった。 私は脳病に因る後遺症、右半身麻痺に苦しんで、彼女は人工肛門を術される身体になってしまった。 
当時の彼女にはまだ小学低学年のお子さんが3人居た。 
私の父も彼女と同じ直腸癌だったけれど、取り切れなかった癌細胞がゆっくりゆっくり父の体を蝕んでいき、4年の闘病の末、天に昇っていった。 
そんな父の姿が彼女に重なり辛くて仕方がなかった。 「 早く家に帰らなきゃ、3人の子供が待っているから 」 そんな心境じゃない筈なのに、私の前ではいつもの ケセラセラ〜な笑顔を見せる。 車椅子でやって来た私の前では泣けなくなってしまったのだろう。彼女の病室を後にしながら、押される車椅子の上でポロポロ涙をこぼしたのを覚えてる。
その彼女が星空に紛れ込んでしまった。 
一番キレイに輝いてね。 でないと貴女を見つけられないよ…

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彼と知り合って、もうすぐ2度目の秋が来る.... 筈。
当時の彼は脳梗塞に因る後遺症で、車椅子から降りる事の出来ない身体だった。
体格の良い人で車椅子が窮屈そうだった。 暫くして胃に癌が見つかった時は、全摘するしか仕方がない状態だった。 会う度に痩せていき、正視するのが辛かった。
その内、今度は肺炎で入院し更に痩せこけていった。 ご飯が食べられないと言う。
どんどん体力も落ちていき、声も出づらくなって会話が困難になっていた。
いつもいつも心配してた。 彼は一人暮らしなのだった。 不自由があれば助けてあげたい。 でも私も、駆けつけてあげられない身体なのだ。 言葉を掛けるしか出来なかった。
ここ2ヶ月、彼の姿を見ていなかったので気を揉んでいた。
その彼が今日来た。 彼はもう声が出なくなっていた。 彼の口が小さくしか動かないので、相手の口の動きを読み取ることで会話する 「 読話 」 での疎通が、上手く図れなかった。 私は彼の言葉を理解する事があまり出来なかったけれど一生懸命彼の思いを酌んだ。 「 ご飯頑張って食べようね。 体力つけば頑張る力も湧いてくるよ 」 
上手い励ましが出来ない。 何を言っていいか分からない。 彼の太ももを撫でながら言
葉を探すも出て来た言葉が 「 ご飯食べようね 」 だった。
情けないけど涙を堪えるのに必死で、一人で動揺していた。
2ヶ月ぶりに会った彼の右脚は、膝上から切断されていた。 
なんで!? なんでこんなにも彼を苦しめる? なんで!!  
彼から魂が抜け落ちそうなのだった.... 

絵夢 * ESSAY * 23:58 * comments(16) * -

父とホウレン草

あの日....   早朝、病院へ検査結果を聞きに行く前に父は、私に持たせるため実家から5分程の家庭菜園までホウレン草を採りに行った。
生涯サラーマンで通した父だけれど、父の作る野菜は店に並ぶ野菜に引けを取らない、形も味も天下一品の野菜だった。  ホウレン草は甘く柔らかかった。
イチゴも大粒で色といいツヤといい、美しい宝石の様なイチゴだった。 よく肥えた土から無農薬の、たまに青虫付きの野菜を沢山、私や孫のためにとセッセと作ってくた優しくて静かな父だった。
優しくて慈悲深い父は皆に愛されていた。  そんな父が病に倒れた....
心配症でいつも最悪の場合ばかりシュミレーションしてしまう母は、父の病院の付添を兄嫁に託し、私が昼前に実家に着くまで一人でオロオロと落ち着かない様子だったようだ。

*・.。.・*・゜・*・.。.・*・゜・*・.。.・*・・.。.・*・゜・*・.。.・*
私がJRと名鉄を乗り継いで実家に着くと、ほどなく父が兄嫁と病院から帰って来た。
「 どうだった? 」 と恐る恐る聞く母に兄嫁は 「 ピンポ〜ン! 当たり〜 」 と明るく言った。  兄嫁の 「 取り越し苦労だったよ。 癌じゃ無かったよ 」 との言葉を期待していた母はみるみる顔色を変えていった。
母の張り裂けそうな心中を察することも無く、明るく 「 ピンポ〜ン! 」 と言ってのけた兄嫁は 「 じぁあね〜 」 と帰って行った....

*・.。.・*・゜・*・.。.・*・゜・*・.。.・*・・.。.・*・゜・*・.。.・*
父と母そして私の三人で遅めの昼食を取っている最中、ずっと母の箸を持つ手が震え、お茶碗やお皿から口に運ぶまでの間にボロボロとご飯やオカズをこぼし、テーブルの上やら下やらがドンドン散らかっていった。  母の心が手に取れて泣きそうになる私。
動揺の激しい母は父や私に何か話掛けようとするのだけれど、話が組み立てれなくて支離滅裂。 私はといえば母が作ったおかずもその味すらも覚えていない....
三人が三人共、鉛の様に重い箸を運んでいたが食べてる実感が無かった。

食後、日の当たらない庭先で、父は静かに早朝に採って来たホウレン草の根を切り、キレイに揃えて私が持ち帰り易い様にまとめていた。  何も語らず俯き加減の父の手はもくもくと動いていた。  平常でいられる筈のない父。  だけどいつもの様に静かに静かに時を刻んでいた。
毎年届けてくれていたホウレン草。  これが最後のホウレン草になるのだなぁと、父とホウレン草を交互に見やるも涙で段々とぼやけていった。
スーパーでほうれん草を見掛けない日はない。 
当り前の食材だけど父のそれは甘くて軟らかかった。 食べ切れない量のホウレン草に、時にうんざりする事もあったけれど....    永遠に77歳のまま私の中で息づく父。
今思うのはこの私が麻痺人になった事、父に知られる事なくてよかったなー と、
車イスに乗った私は、スーパーのホウレン草を見つめながらいつもいつも思う。

絵夢 * ESSAY * 00:22 * comments(21) * -

雪いだく樹













 photo by
 ぼたんさん

私が樹だとしたら 私の姿かたちはどんなだろう 
まっすぐ立てているかな? 倒れそうかな?
芽吹く緑がやがて枯れ落ち また芽吹き… 私の体は変化し続ける
生まれた時から此処にいるが 根を張る場所を選べなかった訳ではない 
此処を選んで生まれて来たのだ そう思いたい

雪がどんなに重く圧し掛かかろうとも いずれ優しき陽が軽くしてくれる
そう、購う事なく私は此処で 枝を拡げて鳥を休ませてあげればいいのだ
人々に木陰を作り風塵を押しとどめて マイナスイオンをたっぷりとね

なぁんて、一人で動けない私は 人生を樹に例えてみるしかなくて(^^;)

理想とする人生と現実の人生は 釣り合いがとれているのだろうか.....

____________________________________
旭川の雪です。 陽が射した時の雪景色はキラキラ美しいですね。 結晶
氷点下の寒さの中、美しい一場面にシャッターを押すぼたんさんのお心もとても美しい。
押し潰されそうな脆い神経で、毎日泣き暮れていた時に出会ったのが ぼたんさん。 
そして やよいさん。 心の美しい人は、掛けて下さる言葉もとても優しい。
私も誰かの心に 「 言葉の灯 」 灯せたらいいな。 でも私、根性悪いから無理かも〜 あっかんべー
絵夢 * ESSAY * 18:36 * comments(27) * -

涙のしずく

さらさらさら  風に乗り  緩やかに流れてゆこう
  さらさらさら  もういいよ  唄わなくていいんだよ  誰も聞いちゃいないんだ
    さらさらさら  風に乗り  リボンの様に流れてゆこう
      さらさらさら  ここにはもう  居られないから……
無かったね どこにも
  ここには在るかと思ったんだ 私の楽園
            救われない愛だって あるんだね


*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆

『 ティアードロップ 』 涙の形のダイアモンド。
ちょっと昔、何かのおまじないの様な気分で衝動買いしたダイアモンド。 
もう流さないんだ! 涙がこぼれそうになると身に付けて、“ 涙のしずく ” をギュッと握った。
あの時の私は悲しいくらいに脆くて儚い心だった。 
TVのCMで、女優さんが、夫に内緒で 「 買っちゃった! 」 と言っているのを観てて、 「 あっ、涙の形だ。 欲しいなー 」 とその足で、TVと同じダイアを扱っているお店に行った。 CMのは1カラット。 ぴかぴか
でも店内には0.7カラットしか置いてなくて、1カラットはお取寄せになると言う。 
これはおまじないであり お守りでもあるから今欲しい。 0,7カラットと1カラットの差は10万円。 いいやこれで。 あの日から幾たびか崩れ落ちそうになると、お守りの様に身に付けて “ 涙のしずく ” をギュッと握った。 すると不思議と涙は 「 こぼれまい! 」 と強い意志を持ったかの様に、瞳の中で踏ん張っていた。 すがるのも良しだわ。
そんなに強くは生きられない。 こんな小さなモノに救われるなら それも良しだ と思った。 歳月が流れいつしかお守りなど必要でなくなってきた。 ダイヤもその辺でコロンと置き去りにされてた。 久し振りに手にしたダイヤは、心無しか輝く事を放棄している様に見えた。 この 『 ティアードロップ 』 は私の流した涙そのものなんだ。 耀きを失う程に、私の涙を吸い込んできたんだと暫し感傷に浸り そしてまた 身に付けた.... 
絵夢 * ESSAY * 08:31 * comments(29) * -

remaining time

もとより 寄り掛かるのは苦手だった

小石をひとつずつ積む様にして 生きている
これからも きっとそう

チクチクと秒針が 私の残り時間を刻む
崩れそうなのだ 私
あと少しもう少し 風に負けない様に角度を決めて
今日も小石を積んでゆく 一人で小石を積み上げる

生きるという事は孤独なのだ
花だとて、緑のままでは愛されない
開花してこそ愛される
私は花として生まれたのならば 咲けたのだろうか

神は私を 孤独に仕立てた 
時計のネジを 自分の意思で巻けないだろうか

私を解放してくれないだろうか もう少し時間をくれないだろうか


絵夢 * ESSAY * 00:40 * comments(17) * -

永遠でない愛     

拾い集めたカップの破片で指を切った。 
ツーと指を伝い血が流れ落ちる。 カップの白が赤を弾く。

こんな筈ではなかったと、過去になったしまった日々として、今この時を捕らえて想う日が来るかしら。
陽炎の様に儚くて、一瞬の甘美な煌めきが、一層深く深く私の身体中に熱を伴って拡がる。
重く、辛く、切なく、ズンズンと重なり、溜り、沈殿してゆく胸の痛み…醒めようとして振り返る。

戻らなくては、帰らなくては、取り戻さなくてはと 呪文の様に唱えるだけで、ぬき射し成らぬ袋小路の行き止まりに、自分を追い込んでしまった。

高まりは熱を帯びて、その思いは言葉となり、仕草となり、勢いをつける。
燐寸を擦っては蝋燭をつけ、消しては又つけ…などと、遠い昔話を繰り返す。
私の築いた愛なんて、人生の上で 軽く読まれる短編小説。
終わりの無い小説なんて無いもの…。

どうでもよかったのだ。 何でコーヒーを飲もうと。 マグカップでだってよかったのだけど、白いカップを買って来た。 あなたの知らないカップにする必要があった。 テーブルクロスも引き抜く様にして丸めて捨てた。 あの日と違う空間を作りたかったのだ。

そんなに乱暴にかき集めたら、指を切ると分かっていた。 少しくらいの痛みなら如何という事無かった。 ダストボックスにガシャンと捨てた。 生き残った片割れのペアカップも捨てた。悲鳴のような音を立てて砕けていった。 あなたが予約した書籍が、主の居ない家に届く。

私はまだ、慣れていないのだ。 コーヒーの湯気の向こうに、あなたが居ないという事に.....


絵夢 * ESSAY * 00:04 * comments(14) * -

永遠でない愛

広大な売り場面積を持つドラッグストアの中
カートに次々と日用品を 少し乱暴に投げ入れていた。

私は少し疲れていた。
職場に於いての昇格試験に通らなかったのだ。
私の部署では合格者は1人だけ。 厳しい結果だった。
「 あり得ない私が落ちるなんて 」 悔しかった。
毎晩遅くまで勉強したし、ここ1週間は星が去って行く明け方近くまで、頭に叩き込んでいた。 法律問題が難問だった。 だが完璧だった筈。 病弱な母を抱え、家事をこなしながら仕事に励んでいた。 忙しい中、上手く趣味の時間も作っていた。 充実した時間を割り振っていた。 上司から持ちかけられた昇格試験に、更なる飛躍の夢乗せて、受かってもいない役職の青写真が出来上がっていった。

何処を間違えたのか分っている。 躓いた箇所も正しい解答も分っている。どうかしていた。 つまらぬ躓きで出直しを強いられてしまった。

ドラッグストアの有線が、触れてはならぬ曲を流した....

ふらっと私は、ストア内のスナック菓子売り場に足を踏み入れていた。 お菓子など食べないのに、何となく積まれた商品に目をやっていた。 「レモンソルトポ ップコーン ?」
ふーん、こんなのあるのかぁ。 製造元を確認して元に戻す。 輸入品のチョコが沢山あった。 カラフルな色彩にオモチャ箱の様だ と思いながら、その場を突き抜けようといた時、 あの歌が流れた。 激しく慟哭し、枯れよとばかりに声を振り絞って、悲しみを曲に乗せていた。 「 あっ 」 小さく声を上げる前に、涙が先に溢れ出てきた。
ストア内の通路、幼い子供がお菓子を求めて走り寄って来た。 カートのバーを握り締めたまま、濡れた目で立ちつくす私を見て、怪訝な顔をし振り返りつつ、目的の菓子の在り処へと去って行った。 
子供とはいえ不覚にも泣き顔を見られた事が恥ずかしかった。
場所が悪かったなー、選りに選って、菓子売り場だなんて。 まだ泣く様に唄っていた。

仕事や趣味に打ち込んでも、友と楽しくランチしても、欲しかったバックを手に入れても、充たされないままでいた。 どこか踊れない私が居た。
    あの日からだ。
「駄目だ、追い込んでは」 と、頭は制御しようとするのだけれど、口は止む事無く攻撃してしまう。    投げつける鋭い言葉が、破綻への近道を作る.....

あの朝、不実な言葉により カップごと手から落ちたコ−ヒーが、向き合ったままの二人の間に流れ広がる。 履いていたワッフルのスリッパがそれを吸い上げ、見る見る茶色に染め上げていく様を、ジッと無言で見つめていた。

簡単だ。 壊すなら、このカップの様に落とせばいい。
永遠など無いと、あの歌が教えてくれた――――――――

絵夢 * ESSAY * 00:18 * comments(18) * -
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